指名委員会・報酬委員会の運営で最も重要なのは、制度設計そのものよりも、
「この委員会を、何のために設置するのか」
について、関係者が本気で合意しているかどうかだと思います。
教科書的には「コーポレートガバナンス強化のため」ということになるのでしょう。
しかし、
実際の現場で問われるのは「どこまで本気でやるのか」です。
従来、CEOの専権事項に近かった役員指名や報酬について、社外取締役に
単に承認の“ラバースタンプ”を押してもらうためなのか。
それとも、
透明性や客観性を担保した議論を本当に行うのか。
企業によってそのスタンスは大きく異なります。
そして実際には、企業が置かれた状況や、取締役会・社外取締役の構成、
経営陣との信頼関係によって、最適解は変わるのだと思います。
だからこそ、委員会を「作ること」以上に
「何を期待し、どこまで機能させたいのか」
を、最初に社外取やCEOと握っておくことが重要と思います。
(2026.5.25)
では、経営の役割とは何でしょうか。
私は、「社員の成長と企業価値の向上が好循環を生み出す仕組みをつくり、そのサイクルを持続的に回し続けること」だと考えています。
社員一人ひとりが成長し、その能力を最大限に発揮することで、企業は価値を創造します。そして、その成果を社員の報酬や成長機会、働く環境の改善に再投資することで、社員はさらに成長し、企業価値も高まっていく。この好循環を描き、維持し、加速させることこそが経営の役割です。
利益だけを追求して人材への投資を怠れば、このサイクルはやがて止まります。一方で、社員満足だけを追求しても、企業が価値を生み出せなければ持続できません。
経営に求められるのは、利益を人への投資につなげ、その投資をさらなる価値創造へと結び付ける循環を回し続けることです。これが私の考える「人的資本経営」です。
(2026.6.4)
日本人と外国人の役員の指名・報酬を担当していた時、最も大きなギャップを感じたのは報酬に対する姿勢の違いでした。
外国人役員との面談では、自らのポジションや報酬について率直に意見を述べることはごく普通のことです。
そのポジションの市場価値はどの程度か。
期待される成果は何か。
その成果に対して報酬は適切か。
報酬に不満があれば、「その条件では引き受けられない」とはっきり言います。
一方、日本人役員はほとんど報酬の話をしません。
「会社にお任せします」「報酬は気にしたことがありません」
そう言う人が少なくありません。
しかし、本当に気にしていない人はほとんどいないように思います。
本来、役員報酬は、その人に対する会社の期待と評価の表れであるべきです。であれば、高い報酬を要求する人が必ずしも問題人材とは限りません。自らの市場価値や期待される役割を理解し、その対価について会社と真剣に議論しているとも言えるからです。
逆に、「報酬には興味ありません」と言う人が健全とも限りません。評価や責任に対する意識が曖昧なケースもあるからです。
私は、役員報酬とは単なるお金の話ではなく、会社が経営人材に何を期待しているかを示すメッセージであるべきだと思っています。
だからこそ役員は、もっと報酬を語ってよい。
いや、経営者である以上、本来は語るべきなのだと思います。
そして会社側も、「高い報酬を求める人材」を問題視するのではなく、なぜその報酬なのかを説明する責任があります。
(2026.6.5)